父の詫び状
(向田 邦子)
NHKで放送されていた「胡桃の部屋」という
ドラマを見て静かな衝撃を受けた。
ありふれた日常から一歩踏み外すだけで
なんてドラマチックになってしまうんだろう!
そんなわけで脚本の向田邦子さんのエッセイを
読んでみました。
まず折り目正しく、きっちりとした美しい日本語が印象的だった。
戦前、戦中、戦後の市井の人々の暮らしぶりが
経験していない私にとってもひどく懐かしく
ノスタルジックな気持ちになる。
しかし幼少期のエピソードは、生き生きとしているのに
なぜか影のようなものも感じる。
あとがきを読んでみると作者がこれらの文章を
生と死を見つめつつ書いたことがわかって驚いた。
どこか影のある理由もそれでわかった。
自分のことを書くのは実は簡単なことではない。
作者はそんな風に「死」と対峙したからこそこんなに淡々と
でも生き生きとした当時の情景を描けたのかもしれない
教訓:父からの詫び状はとてもさりげないのでした。
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