2011年11月8日火曜日

死神の精度


死神の精度
(伊坂 幸太郎)

主人公の死神が様々な「対象者」を七日間調査し、

その死が適当かどうかを決めていくという短編集。



最初の一話を読み終えた時は、

さほど面白いとは思わなかった。

死神があまりに淡々とし過ぎている気がしたからだ。

「死神」というファンタジックな存在なのに

妙にクールでドライでリアルだし、

ありがちに「人情」(そもそも人ではないのだけれど)に

流されたりしない。それが少し寂しく感じたのだ。



でも読み進んでいくうちに、段々この死神と

その調査の「対象者」に愛着が湧いてきた。

死神の目から見た人間はくだらないことにこだわり

金のためならなんでもするような愚かな生き物だ。

この小説の中には特別に良い人は誰も出てこない。

特別にファンタジックな出来事も何も起こらない。

でも本当は生きてるということ自体が人間にとっては

特別なことだと気づかされる。



そんなことを考えながら最後の一話を読んでいると、

ふいに晴れ晴れとした暖かい気持ちになるシーンが待っている。

そして読み終わると「人間も悪くないな」と思えるのである。

ついでに「こんな死神がいても悪くないな」とも思った。



教訓:短編集としても、一本の長編としても読めるお得な一冊。  


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