(伊坂 幸太郎)
主人公の死神が様々な「対象者」を七日間調査し、
その死が適当かどうかを決めていくという短編集。
最初の一話を読み終えた時は、
さほど面白いとは思わなかった。
死神があまりに淡々とし過ぎている気がしたからだ。
「死神」というファンタジックな存在なのに
妙にクールでドライでリアルだし、
ありがちに「人情」(そもそも人ではないのだけれど)に
流されたりしない。それが少し寂しく感じたのだ。
でも読み進んでいくうちに、段々この死神と
その調査の「対象者」に愛着が湧いてきた。
死神の目から見た人間はくだらないことにこだわり
金のためならなんでもするような愚かな生き物だ。
この小説の中には特別に良い人は誰も出てこない。
特別にファンタジックな出来事も何も起こらない。
でも本当は生きてるということ自体が人間にとっては
特別なことだと気づかされる。
そんなことを考えながら最後の一話を読んでいると、
ふいに晴れ晴れとした暖かい気持ちになるシーンが待っている。
そして読み終わると「人間も悪くないな」と思えるのである。
ついでに「こんな死神がいても悪くないな」とも思った。
教訓:短編集としても、一本の長編としても読めるお得な一冊。
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